【委員会】平成15年12月11日 平成15年都市・環境委員会

2003.12.11 : 平成15年都市・環境委員会

◯吉原委員 それでは、今議会に上程されております八ッ場ダムの基本計画の変更についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 もう既に理事者の皆さんからも説明を事細かにいただきました。そして、私も現場にも行って拝見もさせていただいたり、あるいは若干ではあろうかと思いますけれども、地元の皆さんのお話もお伺いをしてまいりました。今さら申し上げるまでもないわけでありますけれども、私たちの毎日の生活の中で水は極めて重要な資源であるわけであります。それだけに、行政もそうでありますし、我々議会としても、将来を見据えての水の安定供給の確保というのはやっぱり大きな責任だな、そういうふうに感じているわけであります。
 昨今は、特に地球温暖化の影響もあろうかと思いますけれども、時には局地的に大雨が降ったり、あるいは時には異常に雨の量が少なかったり、雨の降る状況が不安定になってきたな、そんな思いもしているところではありますけれども、水資源の開発は完成までに非常に長い期間を要する事業であることはどなたもご案内のとおりであります。そうであるだけに、水需要の動向を的確に見通す、そして、将来を見据えた計画と事業実施によって都民の信頼にこたえていくことが最も重要であろうかと考えております。
 そうはいっても、私たちの東京もそうでありますし、日本の全体がそうでありますけれども、今の、大変厳しい経済状況の真っただ中であります。既に東京都参画が決定しているダムであっても、やっぱり大所高所の見地からしっかりと将来の水の供給に支障のない範囲で見直すことが必要ではないかなと思っているところでもあります。
 そこで、先日、我が党の代表質問でもお伺いいたしましたけれども、再度この場で八ッ場ダムの必要性について都はどのように考えているのか、お伺いいたします。

◯南雲都市づくり調整担当部長 八ッ場ダムの必要性についてでございますが、都はこれまで都民への安定的な水供給を確保するために、必要な水源の確保に努力してまいりました。しかしながら、近年における少雨傾向等を考慮いたしますと、将来の水道事業の見直しを行っても、なお水源の安定性を確保しているとはいえない状況にございます。八ッ場ダムは、将来の安定的な水の供給にとりましても、治水上からも不可欠なダムでございます。八ッ場ダムは昭和二十七年の構想発表以来、地元の長年にわたる賛否の議論を経まして、平成十三年にようやく水没関係者との間で合意を得るに至ったものでございます。都といたしましては、八ッ場ダムを一日も早く完成させる必要があると考えております。

◯吉原委員 東京都は、将来の水需要に的確に対応して、渇水から都民を守るという責任をこれから果たしていかなければならないわけであります。その八ッ場ダムは長い歴史を持って、東京都にとって極めて重要で不可欠なダムであると、そういうことのようでございますけれども、一部にはこの八ッ場ダムを中止すべきである、そういう意見もあるとお聞きしております。地元では長い議論の末、ようやく補償基準が妥結をいたしました。現地やほかの場所での明るい将来の生活再建に向けて既に動き出している、そのこともお聞きしております。そして、工事も、私もお伺いいたしましたけれども、本体は別にいたしましても、附帯工事というものは進んできている、そう思っているわけであります。しかしながら、つぶさに現場を検証したわけではありませんので、改めてその工事が現在どの程度進んでいるのか、お尋ねいたします。
 そしてまた、ほんの一部の人だろうと思いますけれども、ダムを中止する、してほしいと求めている方々もおられるようでありますけれども、地元住民の皆さんも平成十三年には国との補償基準に合意をされた経緯もあるわけでありますし、今既にもう移転をされた方々もいらっしゃる。そしてまた、そこにまだお住まいになっていて残っている人も早く移転をしたい、そういわれている方々もいらっしゃるわけでありまして、そういった方々のことを考えると、今のダム事業から撤退ということがあり得るのかどうなのか、お伺いいたします。

◯相川委員長 速記をちょっととめてください。
   〔速記中止〕

◯相川委員長 速記をお願いします。

◯南雲都市づくり調整担当部長 現地におきましては、JR吾妻線や国道、県道のつけかえ工事、ダムの護岸擁壁や防災ダムの工事、代替地の造成などが進んでおりますとともに、小学校の移転などが完了いたしまして、工事は相当程度進んでいるものと認識しております。このような状況で、仮に八ッ場ダムから撤退した場合には、将来の給水の安定性の確保に大きなリスクを生むことはもとより、長年にわたる議論の末、生活再建の道を定めた多くの地元住民の生活設計に大きな混乱を来します。また、水源の大半を他県に依存する東京都といたしましては、水源地との関係に多大な影響をこうむることが考えられます。

◯吉原委員 今改めてお伺いいたしましたけれども、八ッ場ダムからの撤退は極めて問題が多い、そう思わざるを得ないというふうに感じさせていただきました。
 先日も我が党の代表質問に対しまして知事は、同じく群馬県で建設されております戸倉ダムについて撤退をする、そういう方針を打ち出しました。既に工事に着手したあれほど大きなダムでありながらも撤退をする、これは全国的に見ても全く異例のことではないかなと、そう思っているところであります。
 そこで、今回、都は参画中のダム計画について、どのように整理して、どのような結論に至ったのか、また戸倉を撤退した場合の東京都の将来水源はどのようになるのか、お伺いいたします。

◯南雲都市づくり調整担当部長 東京都では、現在、国におきまして利根川、荒川水系のフルプランの改定作業が進められておりますことから、新たな将来水需要の予測結果を十分に見きわめた上で、将来水源確保のあり方を検討してきたところでございます。その結果、将来水需要につきましては、現行の日量六百五十万トンから日量六百万トンに下方修正をする考えでございます。水源につきましては、今現在六百二十三万トンの水源を確保しておりますが、この中には取水の安定性に問題がある、いわゆる課題を抱える水源というものが八十二万トン含まれております。その他、都では八ッ場ダム等の水源に六十三万トン参画しておりますけれども、このうち戸倉ダムにつきましては、将来水需要の見通し、渇水に対する安全性、工事の進捗状況、事業費の増加等を総合的に勘案いたしまして、利水事業から撤退することといたしました。その結果、都の将来水源は、八ッ場ダムや課題を抱える水源を含めまして六百八十万トンとなります。

◯吉原委員 今お話しいただきましたように、課題を抱える水源を含めて日量六百八十万トンということでありますけれども、今回、水道局におきまして将来の水需要が日量六百万トンに下方修正される、そういうふうにいわれているわけですけれども、その差はどういうふうになるのでしょうか。

◯南雲都市づくり調整担当部長 利根川水系におきましては、五年に一回の割合で発生する規模の渇水を目標としておりまして、他の水源に比べまして、計画上の安全度が低い状況にございます。また、国土交通省の試算によりますと、近年、少雨傾向が続いておりまして、実際の水源の供給能力が当初に比べておおむね二割程度低下しておりまして、このことを勘案いたしますと、将来、安定的に供給可能な水量は、課題を抱える水源を含めても将来水需要を下回り、渇水に対し十分な安全性を確保しているとはいえない状況にございます。このため、都としては渇水に強い都市づくりを目指して、八ッ場ダム等によります安定した水源の確保に努めますとともに、既存の課題を抱える水源や多摩地区の地下水源の有効活用、節水施策の推進などの対策を総合的に講じることで、渇水時にも安定的に給水できる安定した水源の確保、そういうものを進めていきたいと考えております。

◯吉原委員 戸倉ダム、そこから撤退するということをもう表明されたということです。そんな中で、地元の群馬県あるいは片品村、もうそこはもちろんでありますけれども、やっぱり全国のダム開発にとっても極めて大きなインパクトを与えたことになる、そう思っております。将来の水需要や渇水への安全性、今の財政状況、さまざまなことを総合的に判断された結果、知事にとってもきっと苦渋の決断をした、そしてまた、今回の都の姿勢を我が党としても大変大きく評価させていただきたい、そういうふうに思っております。今後、周辺の工事が進んでしまっている、その戸倉ダムをどうするかについては、事業者である、もちろん国であります、それと独立行政法人の水資源機構が決めることになるわけでありますけれども、やっぱり東京都としても、国やその機構、あるいは群馬県、片品村と互いによく協議をしていただいて、円満に解決できるようにお願いをさせていただきます。
 先ほど答弁の中にありました地下水源についてでありますけれども、地下水は、私も多摩出身でありますけれども、多摩地域において水道水として使われている、このことはよく承知をしているわけであります。この地下水を水源として正式に位置づけるべきだ、そういう主張があることもよく承知をしているわけでありますけれども、この点について東京都はどのように考えているのか、お伺いいたします。

◯南雲都市づくり調整担当部長 地下水につきましては揚水規制が実施されておりまして、地盤沈下は鎮静化してまいりましたけれども、地域によりましては依然として再発の危険がございまして、今後も揚水規制の継続が必要とされております。また、水質につきましても、トリクロロエチレンやジオキサンなどが検出されたことから、一部の井戸の使用を中止してきた経過がございます。このように地下水は、地盤沈下や水質の面から長期的に見て安定的な水源とはいえない状況にございます。しかし、地下水は、平常時はもとより、渇水時や震災時におきましても身近に利用できる貴重な水源でございます。したがいまして、今後とも地盤沈下や水質の動向に十分配慮しながら、可能な範囲で活用を図ってまいりたいと考えております。

◯吉原委員 やっぱり地下水というものについては、地盤沈下が一番問題だ、そういうふうに私自身も認識しておりますし、一たん沈下すると、その回復が不可能だといわれているわけであります。最近は規制によりまして若干鎮静化しているとはいわれても、埼玉県や茨城県などではいまだに沈下が進んでいる、そういうふうにもいわれておりますし、私どもの東京の二十三区内の中でも、商売をされている方も地下水を使っている方がいらっしゃいますけれども、二つの水槽にためているというようなお話をお聞きしました。それで、その友人の方も、確かに地盤沈下というものはあるということを断言されていた。
 そのことを考えると、やっぱり少し考えていかなきゃいけないと思っているわけでありますけれども、地盤沈下の問題ももちろんありますけれども、さらには水質の問題、ご案内のとおり、茨城県でも砒素の汚染が新たに発覚いたしまして、テレビや新聞でも大きく報道をされた、それはもう我々の記憶に新しいところであります。地下水を利用するときには、こういったことに十分注意をしていただきながら有効活用していただくべきと考えておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 次に、農業用水あるいは工業用水は少し余ってきているのではないかな、そういわれているわけでありますけれども、水道水に転用すれば新しいダムは何もつくらなくてもいいのではないか、そういう主張が一部にあるようなこともお聞きをしております。実際のところはどうなのか、お伺いいたします。

◯南雲都市づくり調整担当部長 農業用水につきましては、渇水時には、都市用水と同様、またはそれ以上の取水制限が実施されております。例えば平成八年で申し上げますと、渡良瀬川におきまして都市用水が四〇%取水制限されたのに対しまして、農業用水は六〇%取水制限されているところでございます。取水制限が厳しくなりますと、農業被害への派生も予想されるわけでございます。このような状況を勘案いたしますと、渇水時といえども、農業用水との間で一時的に水の融通を行うことは困難じゃないかと考えているところでございます。
 また、工業用水の水源につきましては、草木ダムを水源とする秋ヶ瀬取水堰からの取水と多摩川下流にございます調布堰からの取水になるわけですが、水質の面から草木ダムを水源とする秋ヶ瀬取水堰からの取水が現在主体となっております。草木ダムの水源量は現在ほぼ工業用水の需要に見合っておりまして、安定的な取水を行う上でこちらの方は必要だと考えております。

◯吉原委員 今のお話をお聞きしますと、農業用水、工業用水の転用はなかなか難しい、そういうような認識をさせていただきました。
 次に、雑用水あるいは雨水利用など、水の有効利用の促進によってこれまたダムは不要じゃないか、そういうご意見もあるようでございますけれども、その点についてお伺いいたします。

◯南雲都市づくり調整担当部長 東京都におきましては、よその自治体に先駆けまして、ここ三十年にわたりまして雑用水や雨水利用を促進してきたところでございます。その結果、平成十四年度末におきましては、計画利用量は日量約九万トンになりまして、これは東京一日の水使用料のおよそ二%程度となっております。水の有効利用は極めて重要な課題であると私どもも認識しておりますけれども、施設設置や維持管理のコストの問題はもとより、臭気や色、あるいは誤飲、誤接続などの事故といったものが、またそういう衛生上の心配もございまして、社会全体にまだ受け入れられている状況には至っていないわけでございます。したがいまして、水の有効利用の使用量が今後飛躍的に増大するということは困難ではないかと考えられまして、水の有効利用の促進がダムを不要にするとの判断はできないんじゃないかと考えております。

◯吉原委員 水の需要に転用できるであろう、そう思われる地下水あるいは農業用水、工業用水、雨水あるいは雑用水、その点についてお尋ねをさせていただきましたけれども、今の答弁の中にもあったように思いますが、今の、あるいはこれから将来を見据えた東京都の水需要には到底対応し得るものではないな、そんな思いを今改めてさせていただきました。
 最後に、今回の事業費見直しによって二・一八倍に膨れ上がった、そういうことでございますけれども、総額四千六百億円、二千百十億円から大変大きな上げ幅ではないかなと感じざるを得ません。しかし、さまざまな状況の中でそのことが必要だ、そういうことも認識をしている一人でもあります。そんな上で、これからまだ二十二年に完成予定だといわれている状況の中、まだまだ年数がありますし、本体工事に入っているわけでもありません。そういった状況の中で、これからさらに四千六百億円からもっと上回るような、そういうことはないのかなとちょっと危惧をするわけでありますけれども、その点について伺います。

◯南雲都市づくり調整担当部長 事業費の関係でございますが、今回の改定は八ッ場ダム建設事業の中でも最も大きなウエートを占めます水没関係者の生活再建に係る要因の確定、あるいは昭和六十一年からの物価上昇や消費税導入によります要因、現地を精査することによります設計変更、環境対策などの確定などによる要因によるものでございます。この改定によりまして、八ッ場ダムの建設に関する基本計画はほぼ確定したことになるわけでございまして、今後、大幅な物価変動、消費税率の変動など社会経済的要因などが変わらない限り、事業費の変更はないものと国からは聞いているところでございます。

◯吉原委員 今回の事業費の改定に当たって、多分協議の中で、都としても国からいわれたそのままの金額できっと承諾はしていないだろう。公共事業はもちろんのこと、一般の事業もそれぞれ技術革新を図りながら、コストの削減というものを重要視する時代になっているわけでありまして、そういった意味で、コスト削減、国に問い合わせされたのか、どういうふうな状況になったのかわかりませんけれども、四千六百億円の中からまたさらにコスト削減されるものが、きっとこれから将来の中で出てくる可能性もないわけではないと思っておりますけれども、国からの提示のあった金額に対する、その拡幅コストの削減というものが国との協議の中であったのかどうなのか、そして、これからまたさらに、東京都としてもそのコスト削減に向かって国に対してお願いをしていくのかどうか、お尋ねいたします。

◯勝田都市計画局長 国にいろいろ問いかけまして聴取しております。今回の事業費改定に当たりまして、国は、計画の見直し、あるいは工事の設計、施工の変更、あるいは新技術、新工法等の採用によりましていろいろ努力をいたしまして、総額五百五十九億円のコスト縮減を行ったというふうに確認しております。申すまでもございませんが、ダムは長い年月を要する事業でございまして、今後とも国に対しては、ダム完成に至るまで引き続き徹底したコスト縮減を強く求めてまいりたいと考えております。
 もとより、都民生活や都市活動を維持するために水は不可欠でございまして、これを安定的に確保すること、一たび発生すれば大きな混乱が予想される渇水という事態に十全に備えていくことは、行政としての都の責務だと考えております。また、水源県の方々のご協力もあってのことということでございます。こうした認識に立ちまして、今後とも必要なダムは必要との立場で、現在参画しております滝沢ダム、八ッ場ダムが一日も早く完成をいたしまして、将来にわたって都民の皆様方の水に対する不安を払拭できるよう、最大限の努力をしてまいります。

◯吉原委員 ぜひお願いをしたいと思います。特に今は公共事業の是非を問われている時代でございますので、しかしながら、我々都民にとって、あるいは近県の皆さんも当然そうだろうと思いますけれども、必要なものは必要だと、この主張は変える必要は私は全くないと思っている一人であります。とにかくこれから長い将来にわたっても、水の需要の安定というものをぜひ都庁の方から発信をしていただきたい。そしてまた、これからダムの進捗状況によっては、さまざまなことがあり得るんだろうと思いますけれども、大切なこと、重要なこと、そのことについては、逐次この委員会にご報告をいただけるようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。

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