春の恩田川に想う -まちづくりの原点-

新年度が始まり、少しずつ生活にも新しいリズムが戻ってきた頃ではないでしょうか。町田のまちも、春の穏やかな空気に包まれています。

三月末の「桜まつりウィーク」は、あいにくの天気が続いてしまい、楽しみにしていた方の中には残念な思いをされた方もいたかもしれません。しかしながら先週末からて春らしい暖かな陽気がこれから続くそうで、まさに桜を楽しむのにぴったりの季節です。

恩田川沿いの桜は、ちょうど今、満開から散り始めの時期。風に舞う花びらが川に落ちたり、道にふんわり積もったりして、なんとも言えない美しさがあります。実は、この「散り際」こそが、桜の魅力が一番際立つ瞬間かもしれません。

平日にもかかわらず、川沿いにはお花見や散歩を楽しむ人の姿がたくさん見られます。自然の中でゆっくりと時間を過ごせる場所が、こうしてすぐ近くにあるというのは、本当にすばらしいことです。

この恩田川をはじめとした市内各地の桜の名所は、町田にとって大切な「地域資源」です。きれいな景色として楽しめるだけでなく、人が集い、季節を感じ、心が休まる場所として、地域の暮らしを支えてくれています。

まちづくりというと、大きな建物や道路の整備を思い浮かべるかもしれませんが、それだけではありません。私たちが毎日を過ごすこの「まち」が、どれだけ「居心地のいい場所」になるか。それを決めるのは、こうした自然や景観、そして人と人とのつながりです。

ハード部分の整備がどうしても注目されますが、その施設をどう使うか、周辺にどんな工夫を凝らすかといったソフト面をどのように整備していくかがとても重要であるという観点も、まちづくりを考える上では欠かせません。

たとえば、恩田川沿いの桜並木ひとつとっても、ただ木が植えられているだけではなく、ベンチが設置されていたり、地域のボランティアの皆さんによる清掃活動があったり、イベント時には地域の子どもたちが絵を飾ったりと、さまざまな形で「活かされて」いることはご存じだと思います。こうした取り組みがあってこそ、風景は単なる背景ではなく、人々の心に残る「場所」として存在感を持つのです。そして行政がどうやってその「仕組み」を創っていくのか、応援していくのか、が知恵の出しどころです。

また、高齢の方や子育て世代が安心して過ごせる環境をつくるには、物理的なバリアフリーだけでなく、「誰もが使いやすい仕組み」や「困ったときに頼れる人がいるという安心感」を育む仕掛けも必要です。これは、地域で活動するNPOや自治会、商店街などの“人のつながり”によって支えられる部分でもあります。

まちの魅力を高めていくためには、こうしたソフト面の工夫と、それを支える人々の存在が不可欠です。そしてそのためには、地域に暮らす一人ひとりが少しずつ関わり合い、「まち」に目を向けていくことが、何よりの力になります。

春の穏やかな空気の中、ふと立ち止まって町田のまちを見つめ直すと、そこにはすでにたくさんの「宝物(地域資源)」があることに気づかされます。その宝物を守り、育て、次の世代へと手渡していく——それこそが、これからのまちづくりにおいて、最も大切にしなくてはならない考え方だと確信しています。

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