【委員会】平成21年3月17日 平成21年文教委員会

2009.03.17 : 平成21年文教委員会

◯吉原委員 それでは、まず最初に、配偶者暴力対策基本計画の中間のまとめについてお伺いをさせていただきたいと思います。
 平成十九年に、区市町村における配偶者暴力対策の充実等を主な内容として、配偶者暴力対策法の改正が行われました。現在、東京都が進めております配偶者暴力対策基本計画の改定は、これを受けてとのことでありますけれども、先週、警察庁からも発表がありましたけれども、また、新聞でも大きく取り上げられたところではございますけれども、この内容によりますと、昨年、全国の警察に寄せられた配偶者暴力の相談や被害届は約二万五千件を超える、こういうことでございます。
 配偶者暴力防止法施行後、最多であったということでありますけれども、配偶者暴力の被害者には、子どものことや、あるいはまた、先行きの生活のことなどを考えて、自分さえ我慢すれば、あるいはそういうふうに思ってしまう人も多いわけでございまして、被害が潜在化する傾向があるとも聞いているわけであります。
 このことを考えますと、実際の被害者はかなりの数に上るのではないか。また、中には、被害者が命の危険にさらされるようなケースも、あるいはあるでありましょうし、また実際、配偶者暴力に起因した悲惨な事件なども耳にしているところであります。
 そこでまず、最近の都内の配偶者暴力相談の件数と被害者の状況について、お伺いをいたします。

◯高橋参事 配偶者暴力相談につきましては、都の相談支援センター、警視庁、区市町村で受け付けた全体の配偶者暴力相談件数では、平成十九年度は約二万七千件、十五年度から十九年度の五年間で約五千五百件、二六%の増加でございます。特に、区市町村など身近な相談窓口での相談が増加しております。
 被害者の状況でありますが、東京都相談支援センターでの面接相談によりますと、被害者のほとんどが女性で、年代を見ると、三十代が四割と最も多くなっております。また、被害者の六割が職についていない方であり、八割の方に子どもがおられます。不安に思うことは、経済的なことと加害者からの追跡が、それぞれ約四割となっております。

◯吉原委員 ただいまの答弁の中には、加害者からの追跡などの身の安全に不安を感じている人が多いということでありますけれども、被害者や子どもの安全確保はどのように行われているのでありましょうか。
 また、十分な対策がとられているのかどうなのかをお伺いいたします。

◯高橋参事 東京都配偶者暴力対策基本計画中間のまとめでは、基本目標の一つとして安全な保護のための体制の整備を掲げ、速やかに被害者の安全確保ができるよう、一時保護の拡充や、被害者からの申し出に応じた警察による見回りの強化など、関係機関が連携して取り組むこととしております。
 特に、今回の法改正では、保護命令の対象が被害者本人とその子どもから親族等関係者にまで拡大されたほか、繰り返しの電話やメールも禁止されるなど、安全確保が強化されました。
 こうしたことを踏まえ、警察では、配偶者暴力防止法のみならず、ストーカー規制法の適用なども含めて幅広く対応し、安全確保について、被害者の保護はもとより、携帯電話の普及などにも対応して、つきまといや繰り返しの電話等に関する加害者への警告なども行うこととしております。また、警察を含めた相談支援センター等関係機関は、東京都配偶者暴力対策ネットワーク会議等により連携を一層強化して、被害者の安全確保を図っていくこととしております。

◯吉原委員 安全確保についての取り組みは重要でありますけれども、本来は、被害者の身の危険や不安を感じることのないように、早期に身近な地域の中で相談を受けられる環境をつくっていかなければならないというふうに思います。地域では、被害者の視点に立って地道に支援を行っている団体もあります。こうした民間団体の力もかりて、被害者が日ごろから、身近な地域での気軽に相談ができる、支援が受けられる環境をつくっていくことも必要ではないかというふうに思います。
 どのような対策を都はやっておられるのか、お伺いをいたします。

◯高橋参事 配偶者暴力相談については、最近、区市町村など身近な窓口での相談がふえていることから、地域の中で相談や希望する支援を受けられる体制づくりが重要であると考えております。
 このため、中間のまとめでは、今回の法改正の趣旨を踏まえ、区市町村における配偶者暴力対策の充実を基本的視点とし、区市町村の相談支援センター機能の整備を促進するための支援をしていくこととしております。
 具体的には、十九年度と二十年度に実施した地域連携モデル事業の成果を踏まえて、区市町村で活用していただく配偶者暴力相談支援センター機能整備の手引を平成二十一年度に作成する予定でございます。この手引は、地域における被害者からの相談、安全確保、自立支援に必要となる関係機関の連携のあり方などを明らかにするものでございます。
 また、相談や一時保護、同行支援などを行っている民間団体が地域で果たす役割は大きいことから、この手引の中に民間団体とのネットワークのつくり方なども示し、被害者が身近な地域で十分な支援が受けられるよう、区市町村に働きかけてまいります。

◯吉原委員 地域の中で被害者の立場に立った連携がとれていれば、身に危険が迫るなどの緊急時にも速やかに安全の確保がなされるようになるのではないかというふうに思います。児童虐待の場合では、そのような連携体制が整備されてきており、本当に危険が迫ったときの機敏な対応によって命が救われたというケースも出てきているようであります。
 その手引に、こうした緊急時における警察との連携についても盛り込んだらいかがかと思いますけれども、伺います。

◯高橋参事 被害者の身の安全は、何よりも優先して確保される必要があります。とりわけ、被害者の身に危険が迫っている切迫した状況の中で被害者から相談を受けた区市町村等身近な相談機関は、被害者の状況に応じて対応することが求められます。例えば、警察に保護を求めるよう助言することや、相談支援センターへの一時保護の手続、民間シェルターへの協力依頼を行うなどの対応が必要となってまいります。
 ご指摘を踏まえ、この手引の中に、被害者の切迫した状況にも対応できるよう、手順や連携先を明示するなど、被害者の安全確保に努めてまいります。

◯吉原委員 今回の配偶者暴力対策法の改正で、区市町村における対策の充実が求められているとはいいましても、相談支援センター機能の整備などは努力義務であります。既に区市町村による取り組みに温度差が出てきているというふうなことも聞いているわけでございます。被害者からの相談や安全確保などの支援を的確に行っていくためには、身近な地域において行政と警察、そして民間団体が連携をとり、協力体制を築いていくことが重要だというふうに思います。こうした取り組みに地域差が極力生じないように、東京都から各市町村に対して積極的に働きかけをいただきたいと思います。
 また、改定計画に盛り込まれた、被害者に身近な地域での施策がしっかりと根づくように区市町村を支援していただくことを要望して、次の質問に移ります。
 次に、東京都美術館の改修について伺いたいと思います。
 東京都美術館は、昭和五十年に現在の建物が建設されて以来、ことしで三十四年が経過をいたしまして、設備を中心に老朽化が進み、平成二十二年度、二十三年度の二年かけての改修工事を行う予定にしているわけであります。美術館がある上野恩賜公園も、東京都美術館の改修と時期を合わせまして上野公園グランドデザインが策定をされて、それに基づいて地区全体として整備が進められることになっているわけであります。この改修が完成すれば、東京の歴史ある文化の森上野が、一層魅力的になると期待をしているところであります。
 美術館やホールなどの文化施設は、展覧会や公演の場といった機能だけでは当然ないわけでございまして、建物自体がランドマークであり、地域の魅力をつくる要素ともなっているわけであります。東京都美術館についても、前川國男氏の設計による風格のある外観を特徴としておりますし、美術館としての機能はいうまでもありませんけれども、建築物としてきちんと後世に残していくことが重要ではないかというふうに思います。特に、当委員会の服部副委員長も中心になりまして、我が自由民主党としても、このことは執拗に今まで主張をしてきたわけでございます。
 ところが、昨今の社会経済状況の悪化もあろうか思いますけれども、改修内容の見直しが行われたと聞いているわけであります。経費を節減すること自体は大切なことでありますけれども、その内容についてお伺いをしたいと思います。
 ついでに、済みません。確認のためにお尋ねをいたしますけれども、この東京都美術館、そもそもの改修の方針は一体どのようなものであったのか、お尋ねをいたします。

◯桃原参事 東京都美術館の改修につきましては、資生堂の名誉会長である福原義春さんが座長を務められた都立文化施設のあり方検討会におきまして、主に施設の改修の問題を中心に、同じく福原さんが会長を務めております知事の諮問機関であります東京芸術文化評議会におきましては事業運営面を中心としまして、それぞれ有識者の方々にご議論をいただきました。
 その結果、改修につきましては、工事後の早期の開館確保、前川建築の保存の観点から、躯体を残したままで改修を実施すべきとの方向性が示されたところでございます。これを踏まえまして、第一に、都民に親しまれている現在の建物を残すこと、第二に、新たな文化の発信拠点としてふさわしい施設の整備を行うこと、第三に、施設のバリアフリー化や、レストラン、ミュージアム、ショップなどのアメニティーの向上を図ること、第四に、空調、電気等設備の全面更新を実施し、環境への負荷も考慮すること、以上四点を改修の基本方針として定めたものでございます。

◯吉原委員 前川建築の特徴の保存と美術館としての機能改善を両立するために大規模改修を行う、こういうことでございますけれども、従来の方針だったわけでありますけれども、今回行った改修の見直しに当たりまして、当初の計画を変更した点はどこにあるのか、お尋ねいたします。

◯桃原参事 東京都美術館におきましては、院展などの公募展が開催される美術団体の発表の場である公募展示室と、フェルメール展などの展覧会が開催される企画展示室がございます。
 今回の改修におきまして、当初の計画を見直した上で工事内容を変更した点でございますが、三階建ての展示室が横に四棟並んだ公募展示室につきましては、これまでフロアを縦に使用することが基本的な方法となっておりました。当初の計画におきましては、利用団体から同じフロアを横に利用したいという要望がございましたので、現在のエレベーターを移設いたしまして、通路を拡幅することとなっておりました。しかし、工事経費の点につきましても比較検討いたしました結果、現状においても展示室を横につなぐ通路はございます。また、これによりまして、当面、運用の工夫によりまして対応可能でありますことから、今回の改修におきましては、通路拡幅のためのエレベーター移設を見送ることとしたものでございます。
 また、公募展示室に新設する予定でございましたエスカレーターにつきましても、既に設置しているエレベーターを、利用団体用の事務室がございます中間の階にも停止するような改修をすることによりまして、動線改善が図られますことから、今回は設置を見送ることとしたものでございます。
 以上が、今回の改修見直しに当たりましての主な変更点でございます。

◯吉原委員 当初予定していたとおりの改修ができなかったというのは、とても残念に思うわけであります。公募展示室のエスカレーター設置を見送ることになったことは、今の経済状況の中ではやむを得ないのかなというような思いもするわけでありますけれども、利用者の利便性を考えますと、エスカレーターの設置の必要性はなお高いものと考えているわけでございまして、ぜひ今後の課題として、さらに検討を重ねていただきたいというふうに思います。
 また、少し前に、服部副委員長とともに私も現地を再度見させていただきました。企画棟入り口の手前にあります、地下一階から地下三階にかけての吹き抜けの展示室は、エレベーターでおりていくには、その位置が奥にあって大変わかりにくいわけでありますし、三階分の高さがあって、階段で上りおりするのは、お年寄りでなくてもなかなか大変だろうなというふうに思っています。こうしたバリアフリー化が必要なところに関してはどういった改善をされていくのか、お尋ねをいたします。

◯桃原参事 バリアフリー対応の改修でございますけれども、まず基本的な考え方といたしまして、エレベーターを設置することによりまして、障害者や高齢者などのお客様が、どの部屋にも必ずお寄りになることができるようにすることといたしております。その上で、エスカレーターにつきましては、来場者の数に加えて、利用者からの要望についても勘案をいたしまして、設置する場所を選定しているところでございます。
 この結果、美術館を訪れる方々の基本動線でございます美術館の入り口や、先生のお話にもございました、エントランスフロアから吹き抜けのある地下三階の展示室への動線につきまして、来館者等からの要望が特に多かったことを踏まえまして、エレベーターとエスカレーターの双方を新たに設置をしてまいります。このことによりまして、どなたでも移動しやすく改善されるものと考えております。

◯吉原委員 バリアフリーへの対応をできる限り図っていく、こういうことでございますので、ぜひ積極的に進めていただきたいというふうに思います。
 次の視点として、来館者へのサービス向上という面も重要な課題であります。今回の改修で、現在と比較してどのような点が改善されるのか。例えば、自分が見に行ったときはそのようなことはなかったけれども、昨年の夏に開催されたフェルメール展のときには、炎天下、多くの来館者が美術館の外まで並んでいたと聞いているわけでございまして、こういったものが解消されていくのか。
 また、レストランも現在一つしかないわけでございまして、お客さんの長い列ができることがしばしばあるわけであります。展覧会だけでなくて、観覧の後に来館者が楽しむためのサービスという面に関してはよくなっていくのかどうなのか、その点もお伺いいたします。

◯桃原参事 来館者の方々に向けたサービスにつきまして、現在と比較しての改善点でございますが、まず、ご指摘にございましたように、昨年の夏に開催されましたフェルメール展などの展覧会におきまして、多くのお客様に屋外で並んでいただいた状況を踏まえ、企画展示室前の待ち合い場所でございますホワイエの面積を大幅に拡張いたしまして、できるだけ快適な空間でお客様にお待ちいただけるよう改善を図ってまいります。
 レストランにつきましても、現状では一つのみで、お客様を長い時間お待たせすることもございますが、新たにもう一つレストランを設置するとともに、カフェにつきましても整備を行いまして、展覧会の鑑賞の後、お客様にくつろいでいただけるよう環境を改善してまいります。
 また、美術館の根幹施設でございます展示室につきましては、利用者の方々から特に要望の多かった壁面や照明設備につきまして改修を行いまして、出展者の方々が作品が展示しやすいよう、また、来館者の皆様に作品が見やすくなるよう整備してまいります。

◯吉原委員 当初の改修計画だった美術館としての機能向上のためのさまざまな改善が、ある程度計画どおりになされる、こういうことのようでありますので、これからも引き続きご努力をいただきたいというふうに思います。
 ところで、東京都美術館の改修に際しては、施設を借りて展覧会を開催する施設利用者及び展覧会を見に訪れる来館者という二通りの立場の要望、意見を聞くことが大変重要だというふうに思います。利用者等の要望、意見はどのような方法で聞いてこられたのか。
 また、今後はリニューアル後の運営面も含めて、引き続き意見をきちんと聞いていくことが重要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

◯桃原参事 改修内容の検討に当たりましては、これまで東京都美術館の来館者の方々、施設の利用者でございます美術団体の方々、東京都美術館を会場として展覧会を共催する相手方であります報道機関等に対しまして、アンケート調査やヒアリングなどを随時実施をいたしまして、改修内容の検討に活用してまいりました。
 また、先ほど申し上げた美術団体や報道機関等の方々にも参加をいただきまして、局として大規模改修検討委員会を設置いたしまして、その中におきまして、具体的な改修項目について情報提供を行うとともに、ご意見をいただきながら検討を進めてまいりました。
 今後につきましても、改修の詳細部分や具体的な仕様、リニューアル後の運営を検討していくことが必要となりますことから、その内容に反映させていくために、現在、美術館に設置しております運営委員会なども有効に活用しながら、来館者や利用者の方々のご要望、ご意見をお聞きしてまいります。

◯吉原委員 東京都美術館は、上野の駅前にあります東京文化会館と同じく、先ほど申し上げましたように、建築家、前川國男氏の作品であります。今、フランス政府など各国共同の推薦で世界遺産を目指している建築家、ル・コルビュジェの作品群の一つである国立西洋美術館についても前川國男氏がかかわったことは、広く知られているわけであります。国立西洋美術館は、既に国の重要文化財にも指定されているわけでございまして、東京文化会館も重要文化財の指定に値する建造物、こういうふうにいわれているようにお聞きをしております。東京都美術館についても、将来的に国の文化財指定が受けられるように、今後、教育庁とよく連携をとって取り組む必要があるのではないかというふうに思います。
 これまでの質疑で、当初の計画にほぼ沿った形で、前川建築の特徴を残しながら美術館の機能を向上させる改修となることがほぼ確認できたというふうに思います。今回、百億円以上かけて改修をするわけでありますから、できるだけよいものになりますように、着実に改修を進めていただきたいと思います。
 今回、工事を見送ったとされる事項の改善策も含め、東京都美術館の改修と今後の充実に向けて、局長の決意と見解をお伺いいたします。

◯秋山生活文化スポーツ局長 ただいま理事よりお話がございましたとおり、一般にモダニズム建築といわれております前川國男氏設計の東京都美術館でございますけれども、同じく前川設計の東京文化会館、それから、ル・コルビュジェが設計して前川がかかわったといわれている国立西洋美術館とともに、上野の森の芸術性、文化性のシンボルでもありまして、この東京都美術館が建造物として高い評価、価値を得ることは、東京の魅力を発信する点からも大きな意義があるというふうに考えてございます。こうした観点から、今回の改修に当たりましても、前川建築を残すことをコンセプトに据えて設計を進めているところでございます。
 今回、急激な財政状況の悪化、これによる影響があったとはいえ、改修内容を一部見直すことになりまして、大変ご心配をおかけいたしました。ただ、部長からも今ご答弁いたしましたとおり、今回の改修によりまして、前川建築を残しながら、空調等設備、内装などの全面更新、それから、全館バリアフリー化、展示環境の改善、レストラン等アメニティーの向上などなど、美術館の機能が飛躍的に向上するものというふうに考えております。
 東京都美術館、今年度には、前年度より多数の約二百五十万人の方々にご入場をいただいておりまして、また、平成十九年に公募展を扱う国立新美術館ができました以降も、公募団体数には変化がないなど、東京を代表する美術館として都民の皆様方に親しまれ、広く利用されております。このような都民の皆様や公募団体の方々のご期待にこたえるためにも、二十四年度に予定されておりますリニューアルオープンに向け、工事を着実に進めてまいります。
 また、生活文化スポーツ局といたしましては、東京都美術館が文化の発信、創造の場として機能を十分発揮できますよう、今回、工事を見送らざるを得なかった部分の改善策を含めまして、施設の充実に向け、引き続き検討してまいります。

◯吉原委員 歴史のあります東京都美術館でありますから、今回の改修によって、さらによい施設となるように、そしてまた、東京の文化を、日本ばかりではなくて世界にも創造・発信できるような、そんな機能が高まることを期待をいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。

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